2008 |
12,05 |
下の日記の設定で展開されておりますので苦手な方は閲覧をお控え下さい。
今回のテーマ→4兄弟のキャラ区別を確立させる。
「いや、だからね…」
三対の鋭い眼差しが、その一人の中年に向けられている。
威圧に近いそれに内心震えながらも己の意思を告げようと、芭蕉は口を開いた。
「なんていうか、この話ちょっとウソくさいんだねぇ…きゅうぅぅぅん、ってのがないって、いうか」
同じ顔が3つとも思い思いにはぁ?というようなものになる。
とても冷たい眼差しである。
何だか場の温度が4割くらい下がった気がした。
「…中年のオッサンが『きゅうぅぅぅん』って…」
苦笑しながらぽつりと、だが確実に馬鹿にしたような様子でこの中で一番服装の派手な男が呟く。
「いや、でもね正字くん…」
その向かいのデスクに座っていたはずのぼさぼさ頭が立ち上がり、立ち尽くしたままの芭蕉に向かって不機嫌そうな表情のままずんずんと近付く。
「大体なぁ、あんたみたいなただの編集者が『花園空』にケチをつけるなんて百万年早いんだよ」
「う、うういやでも」
「よしなよ惣五郎兄」
その威圧感に気圧されて尻込みする芭蕉に、正字の隣のデスクから助け舟が出る。
だがそれに芭蕉が助かったと思うには少し早い。
机に置かれたノートパソコンから目を逸らさないまま、この中では一番年少の彼が平然と言う。
「どうしてもこの人は僕のストーリーにケチをつけたいんだよ」
「い、いや違う違う!そういう意味じゃなくって!」
「そうでしょ?僕みたいなガキが恋愛話を書くなんて十年早いって言いたいんでしょ」
こっちの話など聞く耳持たずに、相変わらず画面とにらめっこをしている四男に芭蕉はがっくりと肩を落とす。
「だから違うんだって…話を聞いてよ与左衛門く」
「その名前で呼ばないで下さい」
「…ゴメンナサイ…」
ぴし、と急激に四男の周囲の温度が5割くらい下がる。
それに恐縮しまくっていると三男が不意に思いついたように。
「そこまで言うのなら、あんたの一番きゅううぅんってくる思い出とか、何かないわけ?」
少しくらい参考になること言いなよ。
そう言われてえ、と自分の中の記憶を探ってみる。
………。
「ないんだ」
「…あいたたー」
「ふーん」
三者三様に、何とも不愉快な反応をしてくれる。
別にないわけではない。
ただこの年になってそういうことを言うのは恥ずかしいな、とか自分の経歴がバレるのが癪だとか色んなことを考えただけで。
(言ったら絶対にこの場にいる鬼畜カルテットに三者三様ならぬ、四者四様に馬鹿にされるので)
「そ、そういう君たちはないの!?君らハンサオ集団ならそんな経験くらい有り余るでしょ!!まさかそんな顔して無いなんて言わないよねぇ!」
ので思わずムキになってやり返す。
しかしこのテの話は三男がいるのできっと無駄な抵抗で終わるのだろうな。
と、思ったのだが。
「………顔、ねぇ…」
今度は次男のオーラが怪しく黒く放たれる。
「そ、惣五郎くん…?」
「どいつもこいつも顔、顔、顔…。勝手に言い寄ってきたと思ったら、結局は全部こいつ狙いでよ」
押し殺したような声を搾り出しながら、惣五郎が平然と座っている正字を睨み付ける。
え!似てるから分かんなかった!あーでもよく見たらあんためちゃくちゃオタクっぽいしねーいやだー。
声真似をしているのだろうか。
裏声で少しきゃぴきゃぴした女の子のようだ。
「…そうだよ。えぇ!オタクで何が悪いっていうんだ!顔がよけりゃ何でもいいんじゃないのかよお前らはよぉおおお!」
「え、ちょ、おお落ち着いて惣五郎くん!それじゃ八つ当たりだからぁああぁ!」
「この人の言うとおりだぞ惣五郎兄。大体それはあんたの性格が問題有りなだけだろ」
「何だとぉ!?」
こうなっては次男が落ち着くまで止まらない。
あ、何か泣きそう…。
「あんたが禁句を言うからだよ。何とかしてよね惣五郎兄は繊細なんだから」
何事もないかのようにキーボードを打ち続ける四男。
無理なことを言わないで欲しい。てか繊細って、いや、まあ言い方をよくすればそうなのか…。
色々考えながら、本当に半泣きになりながら何とかすがりつく。
「ご、ごめん本当に無理。何とかして与左衛も」
射殺されそうな勢いでその眼光が向けられる。
ひ、と完全に縮みこまってしまう。
もう、この漫画家の担当になってから、散々だ。
「…お願いします。何とかして下さい、さえ君」
ちくしょおおおお、と内心で悔し涙を流しつつ土下座をする。
四男はその態度に満足したのか、無様だねなんて有難~い一言残して沸騰した次男を宥めるべく立ち上がった。
しかし、同じ顔をしていながらも性格が違えばこんなに表情も違うものなんだなぁとしみじみと思う。
座り込んだまま顔を上げて、三つ巴になっているその塊をぼんやりと眺める。
と。
「松尾さん」
ぴしーっと、体が一瞬で緊張する。
今まで沈黙を貫いてきた一番入り口から遠いところにある、与左衛門の向かいにある机の主が口を開いた。
次の瞬間には。
「ぶべらっ!!」
芭蕉の脳天が何かによって無遠慮に叩かれる。
どうやら原稿の束のようだ。
「とりあえず、今日のところは帰って頂けますか。これ以上貴方がいると余計に悪化します」
原稿に関してはまた検討しておきますので。
「…………はい……」
一蹴。
その一言に尽きる。
「曽良兄、原稿で叩くとまた惣五郎兄が怒るよ」
「新品だから問題ない」
うん。
同じ顔の4つの中でも、長男が一番苦手だ。
そう脳内のブラックリストに入れつつ、芭蕉ははらりと一粒涙を零すのであった。
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こんな感じで。ううんまとまりきらんかった。
四男は名前がコンプレックスで普段は「さえ」を強くプッシュします。兄ズもさえ、さえ坊などなどと呼びます。
次男は三男のモテ具合が非常に気に食わないようで、あと性格の問題も有りしきりに衝突します。
元ネタのとある回より派生です。
きっとこの後三男あたりとひょんなことから映画を見に行くことになるのでしょう。
個人的には芭蕉さん総受けなので(元ネタは長男・三男→主人公でしたが)そのままの流れで四男と観に行ってもいいかもしれません。まずは四男懐柔(何)
しかしこれでは芭蕉さんがただの苦労人になってしまう…!もっと変な要素を入れないと!(妙な使命感)