2008 |
12,09 |
時系列が飛び飛びで申し訳ないですが(汗)
全員陥落後の話で、芭蕉さん風邪っ引き話です。四男と。
長男とのやりとりもあるのですがそれは追々。
ではどうぞー。
何だか寒気がするな、と思ってはいた。
だが仕事を休むわけにもいかないので気にせずに先生のマンションに出かけた。
その先でどうやら倒れてしまったようだ。
霞が掛かった思考と視界と熱いからだ。
それでも意識は浮上してくれた。
「気が付いた?」
ひやり、とおでこに冷たいものが載せられる。気持ちがいい。
此方を覗き込むのは少し丸めの、だが確実に青年のそれへと成長しつつある顔で。
「さえ、くん」
切れ切れになりながらその名を呼んだ。
体中が熱い。こんなにも疲れていたのだろうか。
今まで自分が動き回っていたことに半ば感心しながら、彼のため息を聞いた。
「本当に変な人だね、あんた」
何倒れるまで無理してるのさ。
此方が病人になっても優しい声を掛けるつもりはないらしい。
何でと言われても、とても困るのだが…。
「起きられる?正字兄がお粥作ってくれてるけど」
「ま、正字くんが?」
慌ててだるい体を起き上がらせる。
見ると机の上から一人用の土鍋が置かれていた。
何だか今の状況が信じられなくて呆然と与左衛門が鍋から粥をよそっている姿を眺める。
「まだ無理そうなら無理に食べなくてもいいけど。何かお腹に入れないと薬飲めないよ」
差し出された茶碗と蓮華。
反射的に受け取り粥を眺めた。
それは程よく煮詰まっていて、とてもいい匂いがした。
よくよく見ると服もいつの間にか寝巻きに替えられているようで。
(だ、誰の寝巻きなんだろ…悪いことしたな)
そう思い、それからまたふとこのベッドの主も誰なのかと思い立って。
改めて部屋を見渡す。
どうやらここは目の前の少年の部屋のようだ。
「あ、ご、ごめんさえくん…もしかしてベッド」
「随分と今更だね…まあ熱出てるし仕方ないか。いいよ別に」
加齢臭はあんたが治ったらちゃんとシーツもかけ布団も全部綺麗に洗濯とクリーニングで消臭するから。
その一言に少し感動しかけた自分を引っ込める。
(いや、まあ実際洗ってもらわないと申し訳ないんだけどさ…)
汗も大量にかいてしまっただろうし、借りてしまったものはしょうがない。
寧ろその善意はとても有難いことだ。今までの態度からは想像も出来ないくらいに。
粥を少しだけ蓮華で掬い、口に運んだ。
少し塩味の効いた温かい味だった。
「…おいしい…」
自分でも面白いくらいの鼻声だった。
それからまた数口。
ぼんやりとした思考。
なので此方へ向けられている視線には、気付かなかった。
「…まだ食べられそう?無理そうだったらそれ残してとりあえず薬飲みなよ」
そう言われて、茶碗を取り上げられ薬を渡される。
「あんたが寝てる間に医者に診てもらって処方してもらったヤツだから、安心して」
別に何も心配はしていないが…。
というか医者まで呼んで貰ってしまったのか。本当に申し訳ないことをした。
少し学習した。
他人に迷惑をかけたくないのならば無理はするべきではないな、と芭蕉は改めて思った。
それを飲み下すと、またベッドに横にされた。
「不本意だけどちゃんと僕が看ててあげるから、寝てていいよ」
ぱさ、とまたしても載せられる冷たいタオル。
「…あれ、そう言えばさえくん、原稿は…?」
ふと思い出して顔を其方へ向ける。
またしても見下ろされる構図になったその顔には何の変化も見られない。いつも通りの顔だ。
「僕はノルマ達成したから今日はもう上がり。曽良兄と惣五郎兄はやってるけどね。あ、あと正字兄は他社と打ち合わせに出掛けてる」
一瞬の間を空けて、その冷たい手が頭に延びる。
ぎこちなく頭を撫でているらしいその動作は、だが酷く優しいもので。
それが何だかとても心地よくて、また思考がうとうとと落ちかける。
「だから、仕方なく僕が看てあげてるんだよ。ベッドもあんたにとられちゃった訳だし」
いいから早く寝な、芭蕉さん。
最後に聞いた声は、今まで聞いたこともないくらいの優しい声だった。
完全に眠りに落ちたその顔を逸らすことなく、見つめる。
まだ熱を持った頬はそんな場合ではないのだが、何だか扇情的だった。
これからまだ熱はどんどん上がり、この人はもう暫く自分の熱と闘わねばならないのだろう。
(…ごめんね、曽良兄)
汗で少し湿った髪を撫で付ける手は休ませず。
だって仕方がないじゃないか。
今はこの人の面倒を看られる人間が自分しかいなかったのだから。
―――だから、今だけは。
(僕だけの、貴方で)
そんな自分でもくだらない想いを抱きつつ。
どうせもう少しすれば外から帰ってきた兄が様子を見にくるだろうし、明け方くらいになればあの煩い兄がやってくるのだろう。
そして最後に、この人に一番近い場所にいるであろうあの兄が此方にやってきて今のこの自分の仕事を奪っていくのだろうなと。
考えながら、ならばそれまではこうしていようと決意して。
撫でる手を止めずに、いつまでもそれに触れ続けた。
==========
四男編。何故こんなにも達観しているのか。
それにしてもあ、甘い…ような…切ないような…。
芭蕉さんの心が誰に向けられているか(芭蕉さんは無自覚に曽良くんに惹かれているといい)、またその相手がどれくらい芭蕉さんのことを好きかを知っていて。
それを応援してはいますがでもやっぱり自分も芭蕉さんが好き、みたいな。思春期。
あと芭蕉さんが倒れた後の兄弟は色々と大変なことになっていたようです。
思わず医者を召喚するくらいには動揺してます。
それから寝かせる部屋をどうするかでももめ、服を変えるべきなのだけど誰の寝巻きを着させるかでもめ、誰が着替えさせるかでもめました。
前者は述べた通り四男が勝利。寝巻きはさり気なくその威厳(?)で長男が持って行きました。
最後の大役、着替え役はじゃんけんの結果、次男に。←オイシイとこ持っていくスペック。
きっと色々と爆発しそうになりながら、手間取りつつ着替えさせたのでしょう。
三男は仕方がないので料理でリベンジ。
とりあえず、四男はこんな感じです。設定で書き忘れてましたが三男は家族の料理(というか家事全般)担当してます。
次は長男編です。うほーい!
だが仕事を休むわけにもいかないので気にせずに先生のマンションに出かけた。
その先でどうやら倒れてしまったようだ。
霞が掛かった思考と視界と熱いからだ。
それでも意識は浮上してくれた。
「気が付いた?」
ひやり、とおでこに冷たいものが載せられる。気持ちがいい。
此方を覗き込むのは少し丸めの、だが確実に青年のそれへと成長しつつある顔で。
「さえ、くん」
切れ切れになりながらその名を呼んだ。
体中が熱い。こんなにも疲れていたのだろうか。
今まで自分が動き回っていたことに半ば感心しながら、彼のため息を聞いた。
「本当に変な人だね、あんた」
何倒れるまで無理してるのさ。
此方が病人になっても優しい声を掛けるつもりはないらしい。
何でと言われても、とても困るのだが…。
「起きられる?正字兄がお粥作ってくれてるけど」
「ま、正字くんが?」
慌ててだるい体を起き上がらせる。
見ると机の上から一人用の土鍋が置かれていた。
何だか今の状況が信じられなくて呆然と与左衛門が鍋から粥をよそっている姿を眺める。
「まだ無理そうなら無理に食べなくてもいいけど。何かお腹に入れないと薬飲めないよ」
差し出された茶碗と蓮華。
反射的に受け取り粥を眺めた。
それは程よく煮詰まっていて、とてもいい匂いがした。
よくよく見ると服もいつの間にか寝巻きに替えられているようで。
(だ、誰の寝巻きなんだろ…悪いことしたな)
そう思い、それからまたふとこのベッドの主も誰なのかと思い立って。
改めて部屋を見渡す。
どうやらここは目の前の少年の部屋のようだ。
「あ、ご、ごめんさえくん…もしかしてベッド」
「随分と今更だね…まあ熱出てるし仕方ないか。いいよ別に」
加齢臭はあんたが治ったらちゃんとシーツもかけ布団も全部綺麗に洗濯とクリーニングで消臭するから。
その一言に少し感動しかけた自分を引っ込める。
(いや、まあ実際洗ってもらわないと申し訳ないんだけどさ…)
汗も大量にかいてしまっただろうし、借りてしまったものはしょうがない。
寧ろその善意はとても有難いことだ。今までの態度からは想像も出来ないくらいに。
粥を少しだけ蓮華で掬い、口に運んだ。
少し塩味の効いた温かい味だった。
「…おいしい…」
自分でも面白いくらいの鼻声だった。
それからまた数口。
ぼんやりとした思考。
なので此方へ向けられている視線には、気付かなかった。
「…まだ食べられそう?無理そうだったらそれ残してとりあえず薬飲みなよ」
そう言われて、茶碗を取り上げられ薬を渡される。
「あんたが寝てる間に医者に診てもらって処方してもらったヤツだから、安心して」
別に何も心配はしていないが…。
というか医者まで呼んで貰ってしまったのか。本当に申し訳ないことをした。
少し学習した。
他人に迷惑をかけたくないのならば無理はするべきではないな、と芭蕉は改めて思った。
それを飲み下すと、またベッドに横にされた。
「不本意だけどちゃんと僕が看ててあげるから、寝てていいよ」
ぱさ、とまたしても載せられる冷たいタオル。
「…あれ、そう言えばさえくん、原稿は…?」
ふと思い出して顔を其方へ向ける。
またしても見下ろされる構図になったその顔には何の変化も見られない。いつも通りの顔だ。
「僕はノルマ達成したから今日はもう上がり。曽良兄と惣五郎兄はやってるけどね。あ、あと正字兄は他社と打ち合わせに出掛けてる」
一瞬の間を空けて、その冷たい手が頭に延びる。
ぎこちなく頭を撫でているらしいその動作は、だが酷く優しいもので。
それが何だかとても心地よくて、また思考がうとうとと落ちかける。
「だから、仕方なく僕が看てあげてるんだよ。ベッドもあんたにとられちゃった訳だし」
いいから早く寝な、芭蕉さん。
最後に聞いた声は、今まで聞いたこともないくらいの優しい声だった。
完全に眠りに落ちたその顔を逸らすことなく、見つめる。
まだ熱を持った頬はそんな場合ではないのだが、何だか扇情的だった。
これからまだ熱はどんどん上がり、この人はもう暫く自分の熱と闘わねばならないのだろう。
(…ごめんね、曽良兄)
汗で少し湿った髪を撫で付ける手は休ませず。
だって仕方がないじゃないか。
今はこの人の面倒を看られる人間が自分しかいなかったのだから。
―――だから、今だけは。
(僕だけの、貴方で)
そんな自分でもくだらない想いを抱きつつ。
どうせもう少しすれば外から帰ってきた兄が様子を見にくるだろうし、明け方くらいになればあの煩い兄がやってくるのだろう。
そして最後に、この人に一番近い場所にいるであろうあの兄が此方にやってきて今のこの自分の仕事を奪っていくのだろうなと。
考えながら、ならばそれまではこうしていようと決意して。
撫でる手を止めずに、いつまでもそれに触れ続けた。
==========
四男編。何故こんなにも達観しているのか。
それにしてもあ、甘い…ような…切ないような…。
芭蕉さんの心が誰に向けられているか(芭蕉さんは無自覚に曽良くんに惹かれているといい)、またその相手がどれくらい芭蕉さんのことを好きかを知っていて。
それを応援してはいますがでもやっぱり自分も芭蕉さんが好き、みたいな。思春期。
あと芭蕉さんが倒れた後の兄弟は色々と大変なことになっていたようです。
思わず医者を召喚するくらいには動揺してます。
それから寝かせる部屋をどうするかでももめ、服を変えるべきなのだけど誰の寝巻きを着させるかでもめ、誰が着替えさせるかでもめました。
前者は述べた通り四男が勝利。寝巻きはさり気なくその威厳(?)で長男が持って行きました。
最後の大役、着替え役はじゃんけんの結果、次男に。←オイシイとこ持っていくスペック。
きっと色々と爆発しそうになりながら、手間取りつつ着替えさせたのでしょう。
三男は仕方がないので料理でリベンジ。
とりあえず、四男はこんな感じです。設定で書き忘れてましたが三男は家族の料理(というか家事全般)担当してます。
次は長男編です。うほーい!
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