2009 |
05,16 |
次男、芭蕉さんとデートに出かけるの巻。
ですが全然デートしてません。出かける前の兄弟の会話をお楽しみください。
私は四兄弟をどうしたいんでしょうか…(聞くな)
よろしければどうぞ!
ですが全然デートしてません。出かける前の兄弟の会話をお楽しみください。
私は四兄弟をどうしたいんでしょうか…(聞くな)
よろしければどうぞ!
がちゃり。
仕事部屋の扉が開く気配に、その存在を待ち構えていた弟が声を掛ける。
「寝すぎだよ惣五郎兄、シナリオは上がったからあとよろし…」
パソコンのモニターから視線を其方へ向ける。
不意に静まり返る沈黙。
その間の不自然さに、別の原稿に取り掛かっていた長男も同様に其方を見た。
「…」
続く沈黙。
それを破ったのは後ろから入ってきた三男だった。
「おーい朝飯の準備できた…って、うお!」
ずざあっ、と後ずさる音が廊下から聞こえてくる。
最後に直球の質問を投げかけたのは、めぐり巡って四男である。
「……惣五郎兄、何それ」
ぽつり。
半ば呆れにも似たような表情で。
それに対して三人分の視線を受けたまま、口を真一文字に引き締めたままの次男。
普段の彼からは想像もつかないような、黒のスーツをきっちりと着こなして。
(の割に寝癖だけはいつも通りである)
右手には色とりどりの花束を。
――今からどこ行くんですか?
彼を知っている人なら誰でも尋ねたくなるような、そんな格好をしていた。
そんな周囲の沈黙を知ってか知らずか、(何故か)わなわなと唇を震わせながら。
「……私は、」
「今日」
「ある人に」
「おおおお付き合いを申し込んでくるのだっ!!」
再びの沈黙。
それを再び破ったのは。
「………はああ?」
三男だった。
「何か変なもんでも食ったのか兄貴…それとも寝ぼけてるのか」
「止めておいたほうがいいよ惣五郎兄。あまりにも不毛だしフラれる可能性は果てしなく高いよ」
「なっ、相手が誰かも分からないにそんなことを言うな弟よ!」
いえ、分かってます。
次男の一言に三人が心の中で答える。
「フラれるというか、多分本人にそのコイゴコロとやらを理解されないまま終わりそうだね」
「あーラブをライクと勘違いしそうだよなあの人」
「なっななな何だよ!誰かなんてまだ決まってないぞ!勝手に一人に絞り込むな!!」
本人もそれを心配していたようである。
他人から未来予想図をあっさりと告げられ焦っている。
「大体アポイントメントは」
「取ってる。ぬかりはない」
「出掛け先のプランは」
「立てている。完璧だ!」
「あれ、でもそもそも芭蕉さんって今日仕事あるんじゃ」
「うおおおおお!何故名前を出す!今まで誰も出してこなかったものを!」
ぐおお、とその名が出た途端に頭を抱えてしゃがみ込む惣五郎。
「……と、とにかく、私は今日出かけてくるからな!原稿は今日の夜には取り掛かる!」
「あ、こら待て!」
この場の空気や羞恥心に耐えかねた次男はそう告げるなり、韋駄天の如く部屋を飛び出して行った。
引きとめようとした三男の声が虚しく響く。
「…一応本気ではあるっぽいね」
台風が通り過ぎたかのような静寂を壊したのは、四男の冷静な分析だった。
それに対して正字はいつものようにとりすましたような笑顔で答えた。
但しその口角はひくひくと引き攣っている。
「ま、まあ…夜になればしょぼくれた姿で帰ってくるさ」
「―――でも意外と上手く丸め込んだりして」
あの人すぐ情に流されそうだし。
さらりと追い討ち。
恐らくこの場にいる全員が心のどこかで抱いた、1ミリ程度の不安。
しかしそれが少しでも己の障害となる可能性があるのならば。
「………俺、ちょっと出掛けてくるわ」
「行ってらっしゃい」
ふらぁりと振り返って三男が向かったのは恐らく玄関。
ぱたんと遠くから扉の閉まる音。
訪れたのは本日何度目かの静寂。
ただ先ほどと違い、微かにしゃ、しゃ、とペンの擦れる音が部屋の片隅で響いていた。
既に興味を失ったように、原稿へと向かい合う曽良の姿。
「…曽良兄、いいの?」
「何が」
ほんの少しだけ遠慮がちに、与左衛門がそう尋ねる。
すぐに返って来たのはそっけないその一言。
「…いや、なんでもない」
僕もちょっと出掛けてくるよ。
がたんと立ち上がって部屋を飛び出そうとする。
と。
「さえ」
その呼び声に振り返る。
相変わらずこの家の長は原稿に向かい合ったままで。
「時間に余裕がありそうなら、朝飯食べてから行け」
片付けるのが面倒くさい。
それだけを告げて、そこから先はまた何も言わなくなってしまった。
「…分かった」
末っ子の彼は、その言葉に思わず苦笑いを零して。
そうして今度こそ部屋を出て行った。
室内には、ただ紙とペンの擦れる音だけが響いている。
続く?
仕事部屋の扉が開く気配に、その存在を待ち構えていた弟が声を掛ける。
「寝すぎだよ惣五郎兄、シナリオは上がったからあとよろし…」
パソコンのモニターから視線を其方へ向ける。
不意に静まり返る沈黙。
その間の不自然さに、別の原稿に取り掛かっていた長男も同様に其方を見た。
「…」
続く沈黙。
それを破ったのは後ろから入ってきた三男だった。
「おーい朝飯の準備できた…って、うお!」
ずざあっ、と後ずさる音が廊下から聞こえてくる。
最後に直球の質問を投げかけたのは、めぐり巡って四男である。
「……惣五郎兄、何それ」
ぽつり。
半ば呆れにも似たような表情で。
それに対して三人分の視線を受けたまま、口を真一文字に引き締めたままの次男。
普段の彼からは想像もつかないような、黒のスーツをきっちりと着こなして。
(の割に寝癖だけはいつも通りである)
右手には色とりどりの花束を。
――今からどこ行くんですか?
彼を知っている人なら誰でも尋ねたくなるような、そんな格好をしていた。
そんな周囲の沈黙を知ってか知らずか、(何故か)わなわなと唇を震わせながら。
「……私は、」
「今日」
「ある人に」
「おおおお付き合いを申し込んでくるのだっ!!」
再びの沈黙。
それを再び破ったのは。
「………はああ?」
三男だった。
「何か変なもんでも食ったのか兄貴…それとも寝ぼけてるのか」
「止めておいたほうがいいよ惣五郎兄。あまりにも不毛だしフラれる可能性は果てしなく高いよ」
「なっ、相手が誰かも分からないにそんなことを言うな弟よ!」
いえ、分かってます。
次男の一言に三人が心の中で答える。
「フラれるというか、多分本人にそのコイゴコロとやらを理解されないまま終わりそうだね」
「あーラブをライクと勘違いしそうだよなあの人」
「なっななな何だよ!誰かなんてまだ決まってないぞ!勝手に一人に絞り込むな!!」
本人もそれを心配していたようである。
他人から未来予想図をあっさりと告げられ焦っている。
「大体アポイントメントは」
「取ってる。ぬかりはない」
「出掛け先のプランは」
「立てている。完璧だ!」
「あれ、でもそもそも芭蕉さんって今日仕事あるんじゃ」
「うおおおおお!何故名前を出す!今まで誰も出してこなかったものを!」
ぐおお、とその名が出た途端に頭を抱えてしゃがみ込む惣五郎。
「……と、とにかく、私は今日出かけてくるからな!原稿は今日の夜には取り掛かる!」
「あ、こら待て!」
この場の空気や羞恥心に耐えかねた次男はそう告げるなり、韋駄天の如く部屋を飛び出して行った。
引きとめようとした三男の声が虚しく響く。
「…一応本気ではあるっぽいね」
台風が通り過ぎたかのような静寂を壊したのは、四男の冷静な分析だった。
それに対して正字はいつものようにとりすましたような笑顔で答えた。
但しその口角はひくひくと引き攣っている。
「ま、まあ…夜になればしょぼくれた姿で帰ってくるさ」
「―――でも意外と上手く丸め込んだりして」
あの人すぐ情に流されそうだし。
さらりと追い討ち。
恐らくこの場にいる全員が心のどこかで抱いた、1ミリ程度の不安。
しかしそれが少しでも己の障害となる可能性があるのならば。
「………俺、ちょっと出掛けてくるわ」
「行ってらっしゃい」
ふらぁりと振り返って三男が向かったのは恐らく玄関。
ぱたんと遠くから扉の閉まる音。
訪れたのは本日何度目かの静寂。
ただ先ほどと違い、微かにしゃ、しゃ、とペンの擦れる音が部屋の片隅で響いていた。
既に興味を失ったように、原稿へと向かい合う曽良の姿。
「…曽良兄、いいの?」
「何が」
ほんの少しだけ遠慮がちに、与左衛門がそう尋ねる。
すぐに返って来たのはそっけないその一言。
「…いや、なんでもない」
僕もちょっと出掛けてくるよ。
がたんと立ち上がって部屋を飛び出そうとする。
と。
「さえ」
その呼び声に振り返る。
相変わらずこの家の長は原稿に向かい合ったままで。
「時間に余裕がありそうなら、朝飯食べてから行け」
片付けるのが面倒くさい。
それだけを告げて、そこから先はまた何も言わなくなってしまった。
「…分かった」
末っ子の彼は、その言葉に思わず苦笑いを零して。
そうして今度こそ部屋を出て行った。
室内には、ただ紙とペンの擦れる音だけが響いている。
続く?
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